「自分が元気なうちに、お世話になった人たちへ直接『ありがとう』を伝えたい」
「形式ばったお葬式ではなく、自分らしい明るい形でお別れをしたい」
近年、このように考える方が増え、「生前葬」という選択肢が注目されています。生前葬は、本人が生きているうちに開催する葬儀や告別式のこと。しんみりとしたお別れではなく、感謝を伝える「パーティー」や「集い」として、自由な形式で行えるのが最大の魅力です。
しかし、いざ「自分も生前葬をやりたい」と思っても、
「具体的に何から始めればいいの?」
「費用はどれくらいかかるんだろう?」
「当日の流れはどうなるの?」
といった疑問や不安が次々と浮かんでくるのではないでしょうか。また、「家族や親戚にどう説明すれば理解してもらえるか」と悩む方も少なくありません。
この記事では、生前葬を検討している方に向けて、具体的な方法(スタイル)、費用の相場と内訳、準備から当日までの流れ、そして後悔しないための家族への伝え方まで、網羅的に解説します。
この記事でわかること
- 生前葬の主な3つのスタイル(方法)と自分に合う選び方
- 費用の相場(20万円~100万円超)と、会場費・飲食費などの具体的な内訳
- 準備開始から当日までの「やることリスト」を時系列(流れ)で解説
- 家族の理解を得るための「上手な伝え方」と注意点
生前葬の具体的な方法・費用・流れの全知識
まずは、生前葬とはどのようなものか、そのメリットとデメリットを理解し、自分に合ったスタイルを見つけることから始めましょう。
生前葬とは?メリットとデメリット
生前葬は、本人が主体となって開催する「人生の感謝祭」のようなものです。従来の葬儀とは異なり、宗教的な儀式に縛られず、自由な発想で内容を決められるのが特徴です。
メリット
直接感謝を伝えられる: 元気なうちに、自分の口から家族や友人、お世話になった方々へ感謝の言葉を伝えられます。
自分らしい演出ができる: 趣味の作品を展示したり、好きな音楽を流したり、思い出の食事を振る舞ったりと、オリジナリティ溢れる会にできます。
残される家族の負担軽減: 葬儀の形式や内容を自分で決めておくことで、死後に家族が悩む負担(精神的・金銭的)を減らせます。
人間関係の整理: 会を通じて、自分の人生を振り返り、人間関係を再確認するきっかけになります。
デメリット
家族や親族の理解: 「縁起でもない」「亡くなってから葬儀をするのが当たり前」と考える方もおり、理解を得るのが難しい場合があります。
費用が二重にかかる可能性: 生前葬を行った後、亡くなった際に改めて「火葬」や「納骨」が必要となり、そのための費用が別途発生します。(本葬を簡素化することでトータル費用を抑えることは可能です)
参列者の戸惑い: 生前葬に馴染みがない方にとっては、「どのような服装で行けばいいか」「香典は必要なのか」と戸惑わせてしまう可能性があります。
生前葬、どんなスタイルがある?主な3つの形式

生前葬に決まった「方法」はありません。あなたの希望に合わせて、自由にスタイルを選べます。ここでは代表的な3つの形式をご紹介します。
1. パーティー・会食形式(最もポピュラー)
ホテルの宴会場やレストランを貸し切り、立食または着席形式で飲食を楽しむスタイルです。
特徴: 明るく、和やかな雰囲気が作りやすいのが特徴です。スピーチや余興、思い出のVTR上映などを盛り込むことで、参加者との交流を深められます。
おすすめな人: 多くの友人を招き、楽しく感謝を伝えたい人。
2. セレモニー・式典形式
従来の葬儀・告別式のように、一定の式次第に沿って進行するスタイルです。
特徴: 本人による挨拶(感謝の言葉)、経歴紹介、指名献花など、厳かな要素を取り入れつつ、宗教色を排した「人前式」のように行うことが多いです。けじめをつけたい場合に適しています。
おすすめな人: 形式を重んじる親族にも配慮しつつ、きちんと「お別れ(と感謝)」の場を設けたい人。
3. 趣味の発表会・展示会形式
ご自身の趣味(絵画、写真、書道、音楽演奏など)の作品を展示したり、発表したりする場を設けるスタイルです。
特徴: 「自分の生きてきた証」を作品を通して伝えられます。カフェギャラリーや小規模なホールを会場にすることが多いです。
おすすめな人: 趣味やライフワークに情熱を注いできた人。
【費用】相場はいくら?内訳と節約のコツ
生前葬の費用は、招待する人数や会場、内容によって大きく変動します。
- 費用相場: 約20万円 ~ 100万円以上
- 小規模(20~30名程度): 20万円~50万円
- 中規模(50~100名程度): 50万円~100万円
- 大規模(100名以上): 100万円以上
費用の大部分を占めるのは「会場費」と「飲食費」です。以下に主な費用の内訳と、節約のコツをまとめます。
費用の内訳(例)
| 項目 | 内容 | 費用目安(50名の場合) | 節約のコツ |
| 会場費 | ホテル宴会場、レストラン、葬儀場のホールなど | 5万円~20万円 | 公共施設や公民館を利用すると大幅に抑えられる。 |
| 飲食費 | 料理(コース/ビュッフェ)、飲み物 | 25万円~50万円 (一人5千円~1万円) | 料理のランクを見直す。ケータリングサービスを利用する。 |
| 返礼品費 | 参列者への手土産(記念品) | 10万円~25万円 (一人2千円~5千円) | 無理に高価なものにせず、お菓子やオリジナルの記念品にする。 |
| 演出・装飾費 | 祭壇(花)、音響、映像制作、司会者依頼料 | 5万円~30万円 | 映像やBGMは自作する。司会を友人に依頼する。 |
| 案内状費 | 招待状の印刷・郵送費 | 1万円~3万円 | Web招待状を活用する。 |
【注意点】会費制にするか?香典は辞退するか?
費用負担を減らすため、パーティー形式の場合は「会費制」(1人1万円~2万円程度)にするケースも多いです。その場合、香典(お悔やみではないため「御香典」は不適切)は明確に辞退する旨を案内状に記載しましょう。
【流れ】準備から当日までの具体的なステップ
1. 家族への相談・同意(最重要)
まずは家族に生前葬をしたい理由(「直接感謝を伝えたい」「家族に負担をかけたくない」など)を誠実に話します。
反対された場合も感情的にならず、なぜそう思うのかを話し合い、理解を得る努力を続けます。(詳細は次章)
2. 生前葬のコンセプトと形式の決定(半年前~)
「誰に」「何を伝えたいか」という会の目的(コンセプト)を明確にします。
パーティー形式、セレモニー形式など、コンセプトに合ったスタイルを決定します。
3. 日時・場所・予算の決定
大まかな予算を決めます。
参列者が集まりやすい日時(土日祝の昼間など)を候補に挙げます。
スタイルと人数に合った会場(ホテル、レストラン、葬儀場など)を探し、仮押さえします。
4. 招待客リストの作成(3ヶ月前~)
必ず呼びたい人をリストアップします。親族、友人、仕事関係など、どこまでの範囲を呼ぶかを明確にします。
5. 葬儀社・専門業者への相談・見積もり
自分たちでの準備が難しい場合、生前葬プランを持つ葬儀社やイベント会社に相談します。
複数の業者から見積もりを取り、内容と費用を比較検討します。
6. 当日のプログラム・演出の決定(2ヶ月前~)
- 司会者、スピーチの依頼。
- 食事や飲み物の内容。
- 流したい音楽、上映したい映像(VTR)。
- 返礼品(記念品)の選定。
7. 案内状の作成・発送(1~2ヶ月前)
日時、場所、会費制の有無、服装の指定(「平服でお越しください」など)、香典辞退の旨を明記します。
8. 当日の最終準備(1週間前~前日)
- 司会者やスピーチ担当者との最終打ち合わせ。
- 会場スタッフとの進行確認。
- スピーチ原稿、謝礼(司会者など)の準備。
- 返礼品の確認。
9. 生前葬 当日
当日はホストとして、参列者一人ひとりへの感謝の気持ちを忘れずに、会を楽しみましょう。
体調管理に気を付け、無理のないスケジュールを組むことが大切です。
後悔しないために最も重要な「家族への伝え方」
生前葬を成功させるために、方法、費用、流れの計画と同じくらい重要なのが、家族の理解です。
「生前葬」という言葉に、家族が「縁起でもない」「お葬式は亡くなってからするもの」と抵抗を感じるケースは少なくありません。
なぜ生前葬をしたいのか、理由を明確に伝える
- NG例: 「俺の葬式は俺が決める!」「流行ってるからやりたい」
- OK例: 「自分が元気なうちに、お世話になった〇〇さんや△△さんにも、直接お礼を言いたいんだ」
- OK例: 「自分が亡くなった後、葬儀のことでお前たち(子供たち)に金銭的・精神的な負担をかけたくない。だから、自分できちんと準備しておきたい」
「感謝を伝えたい」「負担を減らしたい」というポジティブな理由や、家族を思いやる気持ちを伝えることが、理解を得るための第一歩です。
伝えるタイミング
体調が万全で、家族が冷静に話を聞けるタイミングを選びましょう。いきなり「生前葬をやることに決めた」と事後報告するのではなく、「相談があるんだけど」と切り出すのが賢明です。
死後の葬儀についても話し合う
生前葬はあくまで「生きているうちの感謝の会」です。亡くなった後の「火葬」や「納骨」は別途必要になります。
「生前葬をしたから、亡くなった後は何もしなくていい」と決めるのではなく、「亡くなった後は、家族だけで静かに火葬だけしてほしい」など、死後の希望についても併せて伝えておくことで、家族の不安を取り除くことができます。
生前葬の実際の評価:やって良かったかどうか
これは、「誰の視点から見るか」によって、評価が大きく分かれるのが現実です。
「本人が開催してよかった」というポジティブな声がある一方で、「家族が困惑した」「かえって負担が増えた」というネガティブな声も存在します。
実際の評価としてよく聞かれる「良い点」と「難しい点」をまとめました。
高い評価の場合(やってよかった点)
生前葬を主催したご本人や、その趣旨に賛同した参列者からは、非常に高い評価が聞かれます。
感謝を直接伝えられる(最大のメリット)
これが生前葬を行う最大の動機であり、最高の評価ポイントです。通常の葬儀では言えない「ありがとう」を、本人が元気なうちに自分の言葉で、一人ひとりの顔を見て伝えられます。参列者にとっても、故人(まだ生きていますが)と直接話せる最後の貴重な機会となります。
形式にとらわれない「明るい会」にできる
従来の「湿っぽい(しめっぽい)」お葬式ではなく、ホテルのパーティ形式、立食パーティ、趣味の発表会、ライブなど、本人の希望通りの自由な形式で「明るく楽しい会」にできる点を評価する声が非常に多いです。宗教色をなくせるため、無宗教の方にも選ばれています。
本人の「やりきった感」と精神的な安心
「自分の最後を自分でプロデュースできた」「会いたい人に会えた」という満足感、やりきった感が得られます。また、「死後、家族に金銭的・精神的な負担をかけたくない」という思いから、自分で準備・支払いまで済ませることで、安心して余生を過ごせるという精神的なメリットもあります。
否定的な評価・現実的な課題(難しい点)
一方で、特にご家族や親族の視点からは、ネガティブな評価や「現実的な問題」が指摘されています。
家族・親族の理解を得るのが非常に難しい
これが最大のハードルです。特に年配のご親族などからは「生きているうちから葬式なんて、縁起でもない」「不謹慎だ」という強い抵抗感(アレルギー)が出ることが非常に多いのが実情です。
結局「二度手間」になり、負担が増える
これは非常に現実的な問題です。生前葬はあくまで「本人が主催する感謝の会(パーティ)」であり、亡くなった後の「遺族のための弔いの儀式(お別れの会)」とは別物と捉えられることが多いのです。
本人の認識: これで葬儀は終わり。
遺族の認識: 生前葬は済んだけど、亡くなった後、火葬や納骨、親族への対応のために、結局「家族葬」や「直葬(火葬式)」を別途行う必要がある。
参列者が戸惑う(服装、香典など)
生前葬に馴染みがないため、招待された側が「どのような服装で行けばいいのか(喪服?平服?)」「香典(ご祝儀?)は必要なのか」と非常に戸惑います。主催者側が「会費制のパーティです」「平服でお越しください」と明確に案内しないと、混乱を招きます。
まとめ
生前葬の「実際の評価」は、「本人」の満足度は非常に高い一方で、「家族・親族」の理解を得るのが難しく、死後に「二度手間」になるリスクを抱えている、という二面性があります。
生前葬を「やってよかった」と評価されるものにするためには、いかに事前にご家族や近しい親族と「なぜやりたいのか」を深く話し合い、亡くなった後の儀式(火葬や納骨)をどうするかまで具体的に決めておけるか、が鍵となります。
【まとめ】生前葬の方法・費用・流れを理解し、あなたらしい感謝の場を
生前葬は、「自分らしい最後」をプロデュースし、大切な人たちへ直接感謝を伝えるための素晴らしい方法です。
成功の鍵は、費用や流れを具体的に計画すること、そして何よりも家族の理解を得ることです。
- 方法(スタイル): パーティー形式、セレモニー形式など、自分の目的に合ったものを選びましょう。
- 費用: 20万円~100万円以上と幅がありますが、内訳を理解し、会費制や会場選びで賢く調整できます。
- 流れ(準備): 半年前から計画的に進め、特に家族との対話を最優先にしましょう。
生前葬には決まった形式がなく、ホテルのパーティ形式からレストランでの食事会、あるいは趣味の発表会まで、本人の希望を色濃く反映できるのが最大の魅力です。
しかし、その自由さゆえに、「誰を招待するのか」「どのようなプログラムにするか」といった事前の準備が成功の鍵を握ることもお伝えしました。
また、生前葬を成功させるために最も大切なハードルが、ご家族への伝え方です。なぜ自分が生前葬を行いたいのか、その背景にある想いや感謝の気持ちを丁寧に共有し、理解を得るプロセスが不可欠です。
本記事でご紹介した準備のステップや費用の目安を参考に、お世話になった方々への感謝を直接伝える、あなただけのポジティブな「人生の集大成」として、後悔のない生前葬を実現してください。
