親御さんが亡くなった直後は、悲しみで頭がいっぱいになり、何をどう進めていいか分からなくなるものです。しかし、役所への届け出や葬儀の手配には期限があり、休んでいる暇はありません。「間に合わなかったらどうしよう」という不安を消すために、この記事では今すぐやるべきことを整理しました。この記事を読み進めることで、混乱した状況から一歩抜け出し、落ち着いて大切な人を見送る準備ができるようになります。
親が死亡した際にまず行うべきことは?直後の動きを確認しよう
大切な家族が亡くなった直後は、誰もがパニックに近い状態になるものです。何から手をつければいいか迷いますが、まずは「亡くなったことを証明する書類」を確保し、遺体の安置場所を決めることが最優先です。ここでの初動が、その後の葬儀や行政手続きのすべてに影響します。まずは落ち着いて、目の前の3つのステップを確実に踏んでいきましょう。
病院から「死亡診断書」を受け取ってコピーを複数とる
親御さんが病院で亡くなった場合、担当した医師から「死亡診断書」という書類が発行されます。これは死亡を公的に証明する唯一の書類で、これがないと役所に死亡届を出せませんし、火葬の許可も下りません。受け取った際は、氏名や生年月日、死亡時刻に間違いがないか、その場ですぐに確認してください。
この死亡診断書は、後で行う年金の手続きや生命保険の請求、銀行口座の整理など、あらゆる場面で提出を求められます。原本は役所に提出して戻ってこないため、必ず手元にあるうちにコンビニなどで5枚から10枚はコピーをとっておきましょう。スマートフォンのカメラで撮影して画像として残しておくのも、いざという時のバックアップとして役立ちます。
- 死亡診断書が必要になる主な場面
- 市区町村役場への死亡届の提出(原本)
- 葬儀社への火葬手続き代行の依頼
- 生命保険金の請求手続き
- 勤務先の退職手続きや遺族年金の申請
- 携帯電話や公共料金の解約手続き
遺体を搬送してくれる葬儀社を早急に手配する
病院で亡くなった場合、長い間病室に遺体を安置しておくことはできません。数時間以内には搬送先を決め、遺体を移動させる必要があります。あらかじめ決めている葬儀社があればすぐに電話をかけますが、決まっていない場合は病院が紹介してくれる業者に搬送だけをお願いすることも可能です。
ただし、病院紹介の業者にそのまま葬儀をすべて任せると、費用が高額になるケースもあります。まずは自宅や専用の安置所に遺体を運んでもらうことだけを優先し、葬儀の内容については搬送が終わってからゆっくり相談するのが賢明です。搬送の際には、深夜や早朝であっても24時間対応してくれる業者がほとんどなので、遠慮せずに連絡を入れてください。
- 葬儀社を手配する際の伝え方
- 故人の氏名と現在いる場所(病院名や病室)
- 遺体の搬送先(自宅なのか、専用の安置所なのか)
- 連絡者の氏名と、故人との続柄
- 葬儀の形式が決まっているかどうか(決まっていなくても「検討中」でOK)
家族や親戚、菩提寺など関係が深い人へ連絡を入れる
遺体の安置場所が決まったら、次は近親者への連絡です。まずは兄弟姉妹や故人と特に親しかった親戚、親友に絞って電話を入れましょう。全員に詳しく状況を話そうとすると精神的にも疲れてしまうため、まずは「いつ亡くなったか」「現在どこに安置しているか」という事実を短く伝えるだけで十分です。
また、先祖代々のお墓がある「菩提寺(ぼだいじ)」がある場合は、お寺にも早めに一報を入れてください。お坊さんの予定を確認しないと、お通夜や葬儀の日程がいつまで経っても決まらないからです。最近は葬儀社が間に入って連絡を代行してくれることも多いですが、自分で直接お寺に電話をするのが最も確実で丁寧な対応とされています。
- 連絡を入れる優先順位の目安
- 故人の子、兄弟姉妹、孫
- 特に親しくしていた親戚や友人
- 菩提寺(お寺)の住職
- 故人が現役で働いていた場合は勤務先の直属の上司
- 町内会の会長(地域で葬儀の手伝いがある場合)
役所や年金事務所へ出す書類と手続きの流れ
葬儀の準備と並行して進めなければならないのが、役所への公的な届け出です。これを後回しにしてしまうと、火葬ができなかったり、本来もらえるはずの給付金が受け取れなくなったりする恐れがあります。手続きにはそれぞれ「7日以内」「10日以内」といった厳しい期限があるため、誰がどの役所へ行くのか、家族で手分けして進めるのがコツです。
7日以内に役所へ出す死亡届と火葬許可証の申請
一番最初に行う行政手続きが「死亡届」の提出です。これは死亡の事実を知った日から7日以内に行う必要があります。届け出先は、故人の本籍地、亡くなった場所、または届け出人の住所地の市区町村役場です。この届け出をしないと戸籍に死亡の事実が記載されず、その後のすべての手続きがストップしてしまいます。
死亡届を出すのと同時に必ず「死体火葬許可申請書」を窓口で提出してください。これを受理してもらうことで、火葬を行うために絶対必要な「火葬許可証」が発行されます。多くの場合は葬儀社がこの手続きを代行してくれますが、自分で行う場合は印鑑(認印で可)を忘れないように持っていきましょう。
- 死亡届の手続きに必要なもの
- 死亡届(死亡診断書と一体になっている紙)
- 届け出人の印鑑(シャチハタ以外の認印)
- 火葬許可申請書(役所の窓口でもらえます)
- 手数料(数百円程度かかる自治体もあります)
厚生年金や国民年金を止めるための届け出
親御さんが年金を受け取っていた場合、受給を止める手続きが必要です。これを忘れて受給を続けてしまうと、後から「不正受給」として一括返還を求められるトラブルに発展します。期限は非常に短く、日本年金機構への届け出は国民年金なら14日以内、厚生年金なら10日以内と決まっています。
手続きは、お近くの年金事務所や街角の年金相談センターで行います。もしマイナンバーが日本年金機構に登録されている場合は、原則としてこの届け出は不要になりますが、念のため電話で確認しておくと安心です。また、亡くなった月までの年金は「未支給年金」として遺族が受け取れるため、止める手続きと一緒に請求方法を確認しておきましょう。
- 年金手続きの注意点
- 年金証書を準備しておく
- マイナンバーカードがあれば手続きが簡略化される場合がある
- 期限を過ぎると過払い金が発生し、返金の手間がかかる
- 共済年金の場合は、各共済組合への連絡が必要
健康保険証を返却して葬祭費の支給を願い出る
故人が加入していた健康保険の脱退手続きも忘れてはいけません。75歳以上であれば「後期高齢者医療制度」、現役世代や自営業なら「国民健康保険」や「社会保険」です。役所の窓口や勤務先へ保険証を返却し、資格喪失の手続きを行います。この際、介護保険証も持っている場合は一緒に返却して清算を行いましょう。
また、健康保険の手続きをすると同時に「葬祭費」や「埋葬料」の請求も行います。これは葬儀を行った人(喪主など)に対して支払われる給付金で、国民健康保険や後期高齢者医療制度なら、自治体によって異なりますがおおよそ5万円程度が支給されます。葬儀費用の足しになる大切なお金ですので、領収書や会葬礼状など葬儀を行った証明書を持って申請してください。
- 健康保険別・もらえるお金の名称
- 国民健康保険・後期高齢者医療制度:葬祭費(主に5万円)
- 健康保険(会社の社会保険):埋葬料(5万円)
- 申請期限は葬儀を行った日から2年以内
- 振込先の口座番号がわかる通帳やキャッシュカードを持参する
葬儀の準備をスムーズに進める段取り
遺体の搬送が終わったら、いよいよ葬儀の内容を具体的に決めていきます。ここで最も大切なのは、見栄を張ることではなく「故人がどう送られたかったか」と「遺族が無理なく払える予算」のバランスです。最近は形にとらわれないスタイルも増えているので、親族の意見を聞きながら、納得感のある形式を選びましょう。
家族葬や一般葬といった式典の形式と場所を決める
まずは、どの程度の規模で葬儀を行うかを決めます。最近主流となっているのは、家族や親しい親戚だけで静かに見送る「家族葬」です。一方で、故人が現役で働いていた場合や交友関係が広かった場合は、会社関係者や近所の人も招く「一般葬」を選ぶことになります。また、お通夜を行わず火葬だけを行う「直葬(ちょくそう)」という選択肢もあります。
形式を決めたら、次に場所を選びます。葬儀社の自社ホールを使うのが一般的ですが、自宅や公営の斎場、寺院の会館など、選択肢はいくつかあります。移動のしやすさやバリアフリー対応、宿泊ができるかどうかなどを基準に選ぶと、参列者の負担も少なくなります。
- 主な葬儀形式の特徴
- 家族葬:身内だけでゆっくりお別れができる。費用も抑え目。
- 一般葬:多くの人に参列してもらえるが、対応に追われがち。
- 一日葬:お通夜を省き、告別式と火葬を1日で行う。
- 直葬(火葬式):儀式を一切行わず火葬のみ。最もシンプルで安価。
参列者の人数を予測して香典を受け取るか判断する
葬儀の準備で頭を悩ませるのが「何人来るか」の予測です。家族葬であっても、予想外に親戚が集まることもあります。葬儀社に発注する料理の数や返礼品(香典返し)の数は、この予測人数に基づいて決まるため、年賀状のリストやスマホの連絡先を見て、だいたいの人数を書き出してみましょう。
また、最近では「香典を辞退する」ケースも増えています。香典を受け取ると、後で四十九日を過ぎた頃に「香典返し」を送る手間が発生するからです。受付の手間や返礼品の準備を減らしてシンプルに見送りたい場合は、葬儀の案内に「ご厚志は固く辞退申し上げます」と一筆添えておくのがマナーです。
- 人数予測と香典のポイント
- 親戚の数を確認し、遠方から来る人の宿泊手配も考える
- 料理や返礼品は、少し多めに用意して余ったら返品できるか確認する
- 香典を受け取る場合は、受付の人員を誰に頼むか決めておく
- 供花(お供えの花)の配置についても、親族間の序列に配慮する
葬儀社から渡された見積書の合計金額と内訳を確認する
葬儀の打ち合わせが進むと、葬儀社から見積書が提示されます。ここで注意したいのは、「一式〇〇万円」という表示に何が含まれていないかを確認することです。見積書には、葬儀社に払う「基本料金」のほかに、火葬場に払う「実費」や、お坊さんへ渡す「お布施」、参列者の「飲食代」が別々に書かれていることがよくあります。
特に、飲食代や返礼品は参列者の人数によって大きく変動するため、最終的な支払額が見積もりより跳ね上がることも珍しくありません。「思っていたより高かった」と後悔しないために、最大でいくらかかるかのシミュレーションを葬儀社に出してもらいましょう。不明な項目があれば、その場で遠慮なく質問することがトラブルを防ぐ唯一の方法です。
| 項目 | 含まれるものの例 | 注意点 |
| 基本セット | 祭壇、棺、骨壺、搬送費、人件費 | セット内容から外すと別料金になる |
| 変動費用 | 料理代、飲み物代、返礼品、会葬礼状 | 人数が増えるとそのまま加算される |
| 実費(別途) | 火葬場使用料、式場使用料、待合室代 | 地域によって数千円〜数万円の差がある |
| 寺院費用 | お布施、御車代、御膳料 | 葬儀社への支払いとは別に現金で用意する |
銀行口座の停止や公共料金を止める順番
葬儀が終わって一息つきたいところですが、すぐにお金の手続きが待っています。銀行は名義人が亡くなったことを知ると、すぐに口座をロック(凍結)してしまいます。光熱費の引き落としが止まって困ったり、葬儀費用が引き出せなくなったりしないよう、優先順位をつけて動くことが大切です。
口座が凍結される前に当面の生活費や葬儀費用を確保する
銀行は、親族が死亡を伝えたり、新聞の死亡広告などを見たりして亡くなった事実を確認すると、即座に口座を凍結します。こうなると、相続人全員の同意や書類が揃うまで、1円も引き出すことができなくなります。以前はこれが大きな問題でしたが、現在は「預貯金の仮払い制度」があり、一定額までは引き出せるようになりました。
それでも、手続きには戸籍謄本などの書類が必要で時間がかかります。亡くなった直後の混乱期に必要な現金(葬儀費用の内払いなど)については、口座が凍結される前にキャッシュカードを使って引き出しておくのが現実的な対応です。ただし、引き出したお金を勝手に自分のものにすると親族間で揉める原因になるため、必ず「何に使ったか」の領収書をすべて保管しておきましょう。
- お金を管理する際の鉄則
- 葬儀費用や当面の支払い分だけを引き出す
- 引き出した現金の使い道はすべて家計簿やメモに残す
- 領収書は1枚も捨てずに、クリアファイル等にまとめておく
- 勝手に多額の現金を引き出すと、相続を承認したとみなされるリスクがある
電気・ガス・水道や固定電話の解約と名義変更
実家で一人暮らしをしていた親御さんが亡くなった場合、ライフラインの停止手続きも必要です。特に、冬場の水道凍結や漏電のリスクを避けるためにも、使わない部屋の管理は慎重に行いましょう。電気や水道は、解約するだけでなく「名義変更」をして、遺品整理が終わるまで使い続ける選択肢もあります。
固定電話についても、連絡が来る可能性があるうちは残しておき、落ち着いたら解約の手続きをします。これらはすべて、故人の名前で登録されているはずですので、電力会社や水道局のカスタマーセンターに電話して、契約者が亡くなった旨を伝えてください。
- 停止・変更すべき主なライフライン
- 電気:停止、または清算のために名義変更
- ガス:立ち合いでの閉栓が必要なケースが多い
- 水道:解約すると水が使えなくなるため、掃除が終わるまでは維持を検討
- 固定電話(NTTなど):休止や解約、または名義変更
- NHK受信料:世帯消滅による解約の手続き
クレジットカードの停止と月額サービスの自動引き落とし解除
意外と忘れがちなのが、クレジットカードの停止です。亡くなった後も会費や公共料金の引き落としが続いてしまうと、後で過払い金の請求など非常に面倒な手続きが発生します。カード裏面の電話番号に連絡し、名義人が亡くなったことを伝えて解約しましょう。カードそのものはハサミを入れて破棄することになりますが、ポイントが残っている場合は使い道がないか確認してください。
また、最近ではインターネットを通じた月額制サービス(サブスクリプション)も増えています。動画配信サービスや音楽アプリ、通販サイトの有料会員などです。これらはクレジットカードを止めれば決済できなくなりますが、サービス元に連絡してきちんと退会処理をしておかないと、未払いの督促状が届くこともあるため注意が必要です。
- チェックすべきカードとサービス
- すべてのクレジットカード(家族カードを含む)
- AmazonプライムやNetflixなどの動画・音楽配信
- 新聞購読や雑誌の定期購読
- スポーツジムや習い事の月謝
- インターネットプロバイダーの契約
相続の準備で最初に確認しておきたいポイント
「相続」と聞くとお金持ちの話のように思えますが、実は誰にでも関係がある重要な問題です。特に不動産(家や土地)がある場合は、手続きを放置すると将来的に売却ができなくなったり、多額のペナルティが発生したりします。まずは、争いを避けるために「何が、どこに、どれだけあるか」を正しく把握することから始めましょう。
遺言書があるかないか自宅の金庫や公証役場で探す
相続の手続きで最も優先されるのは、故人が残した「遺言書」です。これがあるかどうかで、財産の分け方がガラリと変わります。まずは自宅の仏壇、金庫、タンスの引き出しなどを探してみてください。もし「公正証書遺言」を作成していれば、公証役場で有無を確認したり、内容を取り寄せたりすることが可能です。
注意点として、自宅で見つかった遺言書(自筆証書遺言)は、絶対にその場で開封してはいけません。勝手に開けると5万円以下の過料(ペナルティ)が科せられるだけでなく、偽造を疑われて遺言が無効になる恐れもあります。必ず「家庭裁判所」へ持って行き、裁判官の前で開封する「検認」という手続きを受けてください。
- 遺言書の種類と扱い方
- 自筆証書遺言:本人の手書き。勝手に開けず家庭裁判所へ。
- 公正証書遺言:公証人が作成。公証役場で検索可能。検認不要。
- 法務局保管の遺言:法務局で管理されている。検認不要。
- 遺言書が見つかったら、まずはコピーをとらずに安全な場所へ保管する
誰が財産を引き継ぐ権利を持つか法定相続人を調べる
遺言書がない場合、法律で決められた範囲の人(法定相続人)で財産を分け合うことになります。誰が相続人になるかを特定するためには、故人の出生から死亡までの一連の「戸籍謄本」をすべて集める必要があります。亡くなった時の戸籍だけでは、過去に離婚歴があったり、認知した子供がいたりする場合を見逃してしまう可能性があるからです。
戸籍集めは、本籍地の役所へ請求して行います。転籍を繰り返している場合は、複数の役所へ郵送で取り寄せる必要があり、非常に手間がかかります。もし自分でやるのが大変な場合は、司法書士や行政書士に依頼して「家系図」のようなものを作ってもらうと、その後の銀行手続きがスムーズに進みます。
- 相続人になる人の優先順位
- 配偶者:常に相続人になる
- 第1順位:子供(子供が亡くなっていれば孫)
- 第2順位:父母や祖父母(子供がいない場合)
- 第3順位:兄弟姉妹(子供も父母もいない場合)
- 会ったこともない親戚が相続人になるケースもあるため慎重に調査する
通帳や登記簿を見て預貯金や不動産などの財産を書き出す
次に、引き継ぐべき財産のリスト(財産目録)を作成します。預貯金については、通帳の記帳を最後まですませ、亡くなった当日の残高を確認します。不動産については、毎年届く「固定資産税の納税通知書」を見れば、どこの土地や建物を所有しているかがわかります。
また、財産にはプラスのものだけでなく「マイナスの財産」もあります。借金、未払いの税金、ローンなどです。もし借金がプラスの財産よりも明らかに多い場合は、3ヶ月以内に「相続放棄」という手続きを家庭裁判所に行う必要があります。期限が非常に短いため、早めに財産の全貌を把握することが身を守ることにつながります。
- 書き出すべき財産リストの例
- 銀行口座:銀行名、支店名、口座番号、残高
- 不動産:住所(地番)、固定資産税評価額
- 有価証券:株、投資信託、社債
- マイナスの財産:住宅ローン、カードローン、未払いの医療費
- 貴金属や骨董品:市場価値がありそうなもの
遺族年金や葬祭費など戻ってくるお金をもらう方法
親御さんが亡くなると出費ばかりが目立ちますが、実は還付金や給付金として戻ってくるお金もたくさんあります。これらは自分から申請しないと1円ももらえません。手続きには期限があるものも多いので、忘れずに請求リストに加えておきましょう。
遺族基礎年金や遺族厚生年金の受給対象か調べる
故人が年金保険料を納めていた場合、残された遺族に「遺族年金」が支払われる可能性があります。これには大きく分けて、18歳未満の子供がいる場合に支給される「遺族基礎年金」と、会社員や公務員だった場合に配偶者などに支給される「遺族厚生年金」の2種類があります。
特に遺族厚生年金は、受給条件が故人の加入期間や遺族の年収によって細かく決まっています。年金事務所へ行けば、自分がいくらもらえるのかの試算をしてくれるので、まずは相談の予約を入れましょう。故人の「年金証書」を持参すると話がスムーズに進みます。
- 遺族年金をもらうための条件
- 亡くなった人が年金保険料を一定期間納めていたこと
- 遺族の年収が850万円未満であること(生計維持関係)
- 受給対象者の優先順位(配偶者、子、父母、孫、祖父母の順)
- 失踪や事故による死亡の場合も対象になることがある
介護保険料の清算をして払いすぎた分を還付してもらう
65歳以上の方が亡くなった場合、介護保険料の清算が必要です。介護保険料は年金から天引きされていることが多いですが、亡くなったタイミングによっては、払いすぎていたり、逆に不足していたりすることがあります。
役所から「過誤納金還付通知書」という手紙が届いたら、同封されている書類に振込先口座を記入して返送しましょう。これで、数千円から数万円のお金が戻ってきます。逆に不足している場合は、遺族が窓口で支払うことになります。介護保険以外にも、後期高齢者医療保険料の清算もあるので、役所の窓口でまとめて確認するのが効率的です。
- 介護保険手続きのポイント
- 介護保険証を役所へ返却する(郵送可の自治体も多い)
- 亡くなってから数ヶ月後に還付通知が届くことが多い
- 施設に入居していた場合は、施設への支払い清算も同時に行う
- 還付金の振込先は、相続人の代表者の口座にする
生命保険の受取人が保険会社へ給付金の請求を出す
もし親御さんが生命保険に加入していたなら、早急に保険会社へ連絡をしましょう。生命保険金は遺産分割協議を待たずに、受取人が指定されていればすぐに受け取ることができます。このお金は葬儀費用や当面の生活費として非常に貴重な財源になります。
手続きには、保険会社指定の請求書のほか、死亡診断書のコピーや受取人の戸籍謄本などが必要です。複数の保険に入っている場合は、それぞれの会社に連絡するのは大変ですが、最近では「生命保険契約照会制度」を使えば、どこの会社と契約があるかを一括で調べることも可能になっています。
- 生命保険の請求時に用意するもの
- 保険証券(見つからない場合はカスタマーセンターへ連絡)
- 医師の死亡診断書(コピー可の場合が多い)
- 受取人の本人確認書類(免許証など)
- 亡くなったことが確認できる戸籍書類
- 入院していた場合は、入院給付金も同時に請求できるか確認する
亡くなった後に発生する税金の申告と期限
税金の手続きは、少し期間が開いてからやってきます。しかし、これを怠ると「延滞税」という重いペナルティが課せられるため、カレンダーに期限を書き込んでおきましょう。自分たちだけで判断せず、難しいと感じたら税理士などの専門家に早めに相談するのが、結果として最も安く済む方法です。
4ヶ月以内に行う所得税の準確定申告
通常、確定申告は1年に1回自分で行いますが、年度の途中で亡くなった場合は、遺族が本人の代わりに申告を行う必要があります。これを「準確定申告」と呼び、期限は亡くなった日から4ヶ月以内です。
亡くなった年に一定の所得(年金が400万円以上、副業収入、不動産所得など)があった場合が対象です。逆に、多額の医療費を支払っていた場合は、申告することで税金が戻ってくることもあります。源泉徴収票や医療費の領収書、生命保険料の控除証明書などをかき集めて準備しましょう。
- 準確定申告が必要な主なケース
- 自営業を営んでいた、または不動産収入があった
- 公的年金等の収入が年間400万円を超えていた
- 2ヶ所以上から給与をもらっていた
- 亡くなった年に不動産などの資産を売却した
- 医療費控除を受ければ還付金がもらえる可能性がある
10ヶ月以内に済ませる相続税の計算と納税
最も金額が大きく、神経を使うのが「相続税」です。亡くなった日から10ヶ月以内に、税務署へ申告と納税を済ませなければなりません。ただし、すべての人が対象ではなく、遺産の総額が「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」という基礎控除額を超えた場合のみ、申告が必要になります。
この計算には、預貯金だけでなく家や土地の評価額、さらには亡くなる3年(法改正により今後は最長7年)以内に贈与された財産も含まれます。不動産の評価は素人には非常に難しいため、基礎控除額ギリギリになりそうな場合は、早めに相続に強い税理士に相談することをおすすめします。
- 相続税の基礎控除額の計算例
- 相続人が子供2人の場合:3000万円 + 600万円 × 2 = 4200万円
- 遺産が4200万円以下なら、原則として申告は不要
- 特例(小規模宅地等の特例)を使う場合は、税額が0円でも申告が必要
- 期限を1日でも過ぎると、加算税や延滞税が発生する
自動車税の納税通知や固定資産税の名義変更の手続き
意外と見落としがちなのが、故人名義の車や不動産の「維持にかかる税金」です。車をそのまま家族が使い続けるにしても、廃車にするにしても、名義変更の手続きを行わないと、いつまでも故人の名前で納税通知書が届き続けてしまいます。
不動産についても、令和6年4月から「相続登記(名義変更)」が義務化されました。放置しておくと10万円以下の過料を科せられる可能性があります。法務局へ行って手続きをするか、司法書士に依頼して、現在の所有者の名前を正しく書き換えてもらいましょう。
- 車両と不動産の手続き
- 普通自動車:陸運局での名義変更(遺産分割協議書が必要)
- 軽自動車:軽自動車検査協会での手続き(比較的簡単)
- 不動産:法務局での相続登記(戸籍謄本や登録免許税が必要)
- 放置すると将来売却したくなった時に、手続きが非常に困難になる
スマホの解約や実家の片付けといった身の回りの整理
最後に、現代ならではの課題である「デジタル遺品」と、物理的な「遺品整理」についてです。スマホの中には大切な思い出だけでなく、解約すべき有料サービスや隠れた資産が眠っていることもあります。無理に一度に終わらせようとせず、少しずつ整理していきましょう。
本人のスマホのパスワード解除と有料アプリの停止
最近、非常に増えているトラブルが「スマホが開けない」という問題です。故人のスマホがロックされていると、電話帳が見られず友人への連絡ができなかったり、ネット銀行の残高が確認できなかったりします。無理にパスワードを何度も間違えると完全にロックされてしまうため、もしパスワードがわからない場合は、無理に開けずキャリアのショップに相談しましょう。
スマホが開けたら、まずは有料のサブスクリプションアプリがないか確認します。また、SNS(LINE、Facebookなど)のアカウントをどうするかも検討が必要です。追悼アカウントにする機能があるものもあれば、そのまま削除するものもあります。故人のプライバシーにも配慮しながら、一つずつ整理を進めましょう。
- スマホ整理のチェックリスト
- 有料アプリや音楽・動画サービスの契約状況
- ネット銀行や証券会社のログイン情報の有無
- SNSアカウントの削除、または追悼設定への変更
- 写真や動画など、思い出データのバックアップ
- 不要になった本体はキャリアショップなどで適切に処分する
実家を空き家にする前に不要な家財をどうするか決める
親御さんが住んでいた実家の整理は、精神的にも肉体的にも最もハードな作業です。思い出の品を一気に捨てるのは辛いものですが、空き家のまま放置すると家が傷み、火災や防犯上のリスクも高まります。まずは「貴重品(現金、貴金属、重要書類)」「形見」「処分するもの」の3つに分類することから始めましょう。
家具や家電など大きなゴミを自分たちだけで処分するのは限界があります。その場合は「遺品整理士」が在籍する専門業者に依頼するのも一つの手です。費用はかかりますが、供養をしながら丁寧に仕分けをしてくれるため、遺族の負担は劇的に軽くなります。
- 遺品整理をスムーズに進めるコツ
- まずは現金、預金通帳、権利証などの「お金」に関わるものを探し出す
- 日記や写真は最後に整理する(最初に見ると手が止まってしまうため)
- リサイクルショップやフリマアプリで売れそうなものは別にする
- 業者に頼む場合は、必ず3社程度から相見積もりをとる
ネット銀行や証券口座など目に見えない資産のログイン情報
通帳がない「ネット銀行」や、郵送物がない「ネット証券」は、遺族が気づかないまま放置されやすい資産です。故人のパソコンのブックマークやスマホのアプリ、登録されているメールアドレスに届く通知などを手がかりに探しましょう。
また、暗号資産(仮想通貨)を保有しているケースもあります。これらは専用の「ウォレット」や取引所にログインできないと、取り出すのが非常に困難です。もしどうしてもログイン情報が見つからない場合は、各金融機関のカスタマーサポートに連絡し、相続人として照会をかける手続きを行いましょう。
- 見えない資産を探す場所
- メールソフトの受信トレイ(銀行や証券会社からの通知)
- ブラウザ(ChromeやSafari)のパスワード保存機能
- 家計簿アプリとの連携状況
- 確定申告書の控え(配当金などの記載がないか)
- 公共料金の引き落とし履歴(見たことのない金融機関名がないか)
まとめ:親の死後に必要な手続きを確実に終わらせるために
親御さんが亡くなった後は、膨大な手続きに追われ、心が休まる暇もありません。しかし、一つひとつを書き出し、優先順位をつけて取り組めば、必ず終わりは見えてきます。まずは深呼吸をして、今すぐ必要な「死亡診断書」と「葬儀社の手配」から始めましょう。
- 死亡診断書のコピーは、あらゆる手続きで使うため10枚程度とっておく
- 役所への死亡届は7日以内、年金の停止は10〜14日以内と期限が早い
- 銀行口座は凍結される前に、当面の葬儀費用や生活費を引き出しておく
- 相続放棄を考える場合は、亡くなってから3ヶ月以内に判断する
- 所得税の準確定申告は4ヶ月、相続税の申告は10ヶ月の期限を守る
- スマホやネット資産などのデジタル遺品も、忘れずに解約・整理する
- 無理をせず、税理士や司法書士、葬儀社などのプロを頼って負担を減らす
大切な人を亡くした悲しみの中で、これらの作業をこなすのは本当に大変なことです。すべてを完璧にやろうとせず、まずは目の前のことから一つずつ片付けていきましょう。あなたが落ち着いて手続きを進めることが、故人への一番の供養になるはずです。
